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非接触負荷感応自動変速機

開発者の前川さん

開発者:(独)産業技術総合研究所

永久磁石を用いた、小型で全く新しい概念の変速機。簡単で低コストなため、今後の応用が大いに期待される。写真は、開発者の前川さん。


変速機内で完全自給自足、新タイプの変速機

茨城県つくば市にある産業技術総合研究所。TLOとして様々な特許技術の流通を促進する坂アドバイザーは、簡単な構造、低コスト、そしてコンパクトなある特許技術に出会った。その特許技術を開発したのが、同じ産業技術総合研究所知能システム研究部門の工学博士、前川仁さんだ。前川さんが開発した技術は、非接触式負荷感応型自動変速機だ。この変速機は、変速機内で完全に自給自足で動作している。つまり、外部に電池や電子回路などの付属機器が一切必要ないのである。出力に負荷がかかっていない状態では、入力と出力が1:1の同じ速さで回る。出力に負荷が加わって重くなると、変速機内で自動的にクラッチが切り替わり、入力と出力が3:1のローギアに変わる。出力の負荷がなくなると、再び1:1のハイギアに戻る。負荷の大小に応じて、ローギア・ハイギアが自動的に切り替わるのだ。

この非接触負荷感応自動変速機は、クラッチを用いた2段変速機であり、動力伝達および変速動作の双方を磁気的な非接触機構により実現。まずは磁気クラッチ機構。中間円板は軸方向にスライド可能で、低減速、高減速それぞれの入力円板の一方と対向する。中間円板の周上に配置された赤と青の永久磁石(右図参照)と、各入力円板の周上に配置された黄色の磁性体ヨークの間に作用する吸収力により動力を伝達する。そして、負荷に応じた変速動作を実現するために、クラッチ切替機構を使用している。中間円板と出力円板には、それぞれ永久磁石を配置し、両者が負荷トルクに応じて相対回転すると、永久磁石の吸引・反発力のバランスが変化する。その結果、中間円板が軸方向にスライドする。それらによって、補助動力や電子回路を使うことなく、動力伝達と自動変速動作の双方を実現できるのだ。

この自動変速機にモーターを取り付け、電動昇降椅子を作成。自動変速機の搭載により、2つの動作を両立することが出来る。使用者が着席していない場合は低減速比で動作し、高速な位置あわせが可能となる。一方、使用者が着席すると高減速比で動作し、高トルクで体重を駆動する。そして、着席してもしなくても、変速機が状況に感応して自動的に変速するため、使用者が特別な操作を行う必要がない。

磁石が生み出した新発想

もともとロボットの研究をしていた前川さん。ロボットを動かすときは、力は必要ないが早く動かしたい。また別の状況では、ゆっくりでいいが、大きな力を出したい。こういった使い分けをする必要があったという。ロボットの研究と関連するテーマとして、従来大きな工場、工作機械での生産システムを出来るだけ小さくして、資源もエネルギーも必要最小限で生産しようとする「マイクロファクトリー」という研究も行っていた。その中で、ものを運ぶ小さなロボットアームを開発した。このロボットアームの先端には、微妙な作業を行うための力センサーを取り付けた。力センサーは磁石を使用し、微小な力を計測する。この磁石のサンプルを取り寄せた時に、現在の磁石が非常に強力になっていることを知り驚いたという。

そして、簡単で低コストでコンパクトな変速機が開発できないかとの思いが結びつき、高効率でメンテナンスフリー、穏やかな変速動作、何よりもシンプルで電子回路や補助動力が不要の自動変速機が生まれた。前川さんは、この技術の活用のすべを求めて、特許流通アドバイザーの坂さんのもとを訪ねた。前川さんの技術を見た坂アドバイザーは、その技術の面白さと、応用の広さを感じ、前川さんのサポートにまわった。研究所にこもりがちだったという前川さんは、坂アドバイザーに出会うことで、自分の作った技術を世の中で使ってもらうためには、研究者自身が企業や外部に足を運ぶ必要があると感じたという。技術の開発者とアドバイザーが手を取り合うことで、自動変速機は新たな可能性を広げようとしている。

知恵の輪ファイル((独)産業技術総合研究所

この技術についてのお問合せ先

(財)日本産業技術振興協会 産総研イノベーションズ
TEL: 0298-61-9230

この記事は2006年10月放映段階での内容です。


放映ムービー

非接触負荷感応自動変速機

非接触負荷感応自動変速機

放映ムービーを見る(47MB/約7分)

磁気クラッチ機構

非接触磁気クラッチの構成

低負荷時の様子

中間円板上に配置された青と赤の永久磁石が、低減速入力円板に配置された黄色の磁性体ヨークと作用する。

高負荷時の様子

高減速入力円板上に配置された黄色の磁石と作用する。

クラッチ切替機構

中間円板と出力円板には、それぞれ永久磁石を配置し、両者が負荷トルクに応じて相対回転すると、永久磁石の吸引・反発力のバランスが変化する。

自動変速機にモーターを取り付け、電動昇降椅子を作成

着席時、着席していない時、変速機が状況に感応して自動的に変速するため、使用者が特別な操作を行う必要がない。


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